
「朝いたはずの派遣が消えた…そして夕方、玄関に現れた“彼”」

ある日、私たちの職場では10人以上の単発派遣スタッフを迎えて作業を行っていました。朝の点呼では全員揃い、順調に仕事が始まったはずでした。

しかし、昼過ぎ――
「一人、足りない…?」
スタッフの一人が異変に気づきました。朝は確かにいたのに、その姿が見えない派遣スタッフが一人。施設内を探しましたが、どこにも見当たりません。そのまま時間だけが過ぎ、とうとう夕方になりました。
16時半、定時で帰るスタッフがタイムカードを押しに玄関へ向かっていたときのこと。
廊下の先から、見覚えのある若い男性が慌てた様子で入ってきました――そう、朝いたはずの、そして忽然と姿を消した“あの派遣”です。
スタッフが「どこに行っていたんですか?」と声を掛けると、彼はしどろもどろに
「具合が悪くて…」と返答。しかし、体調が悪いなら普通は申し出るものです。問い詰められると、彼は急にロッカーへ駆け込み、自分の荷物を持って逃げようとしました。社員も加わって追いかけ、大騒ぎに。
当時、派遣スタッフのタイムシートは玄関に置かれており、人目がないため誰でも自由に記入できる状態でした。どうやら彼は日中どこかで時間を潰し、終業時刻が近づいた頃に戻ってきて、勤務していないにもかかわらず「勤務したフリ」でタイムシートに記入し、日給を得ていたのです。


地味で目立たない印象のメガネをかけた若い男性。その“存在感の薄さ”を逆手に取り、管理が甘かった私たちの職場で、しっかりと日給をもらい続けていたのでした。
すぐに派遣会社へ報告し、その男性は出入り禁止に。すると驚いたことに、派遣会社から返金がありました。その額は10万円以上。つまり、この日だけではなく、過去にも同じ手口で何度も“やられて”いたのです。
私たちも猛反省し、すぐに対策を講じました。
- タイムシートは作業スペース内、人目につく場所へ移動
- 朝礼時に全員の点呼と配置確認
- 午前と午後に作業場所の再チェック
- 定時確認を個別に行い、ルールを明確に説明
- 何かあればすぐ声をかけるよう注意喚起
…実は、それでもまた似たような事件が起きてしまうのですが、それはまた別の機会にお話ししましょう。
